東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)90号 判決
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〔編注〕一 特許庁における手続の経緯原告は、昭和三十四年十二月二十一日、「狭隙面、曲面等の研磨に便ならしめた可撓性車輪形研磨工具」につき実用新案の登録出願をしたところ、昭和三十六年六月二十三日、拒絶査定を受けたので、同年七月三十一日、これに対する抗告審判を請求し、同年抗告審判第二、二四九号事件として審理されたが、昭和四十一年四月二十八日、「本件抗告審判の請求は、成り立たない。」旨の審決があり、その騰本は、同年五月二十三日、原告に送達された。
二 本願考案の要旨
開口周縁に段部2を形成した凹形匣体1の全周面に凹形匣体1の軸方向の割溝44……を設け、該割溝と割溝との間の周面に透孔5、5……穿設し、該透孔に可撓性剛毛の束6を植設して凹形匣体1の内側より針金7にて順次係着し、凹形匣体1内に一端に開放切込10を切欠し、他端に自由回転を防止する凹欠11を凹設した鍔10を設けた管軸12を内装し、該切込10に基部巻込係止部14を形成し、複数の切込22を有するサンドクロス15を嵌装して巻込係止部14を切込10を内側縁に係止せしめ、サンドクロス15の中間部を前記割溝4に挿込みて剛毛の束の間より外側に露出させ、凹形匣体1の段部2に閉蓋16の係合縁17を係合するとともに、該閉蓋の軸孔18周縁に形成した突縁19を管軸12の鍔10'を設けた開口部に緩入し、かつ、突縁19の周囲に適当間隔を存して突成した突起20を前記管軸12の凹欠11に嵌合してなる狭隙面、曲面等の研磨に便ならしめた可撓性車輪形研磨工具。
〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、本願考案が、当事者間に争いのない本願考案のとおりの構成(個々の構成要素である技術が本願出願前公知ないし周知であることは、原告の認めて争わないところである。)を結合することにより、原告主張のような作用効果を奏することを看過誤認し、これを前提として、本願考案をもつて各引用例に示された公知事実から容易に推考できるものであるとした点において判断を誤つた違法がある旨主張するが、右主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、
(1) まず、原告主張の(1)の作用効果についてみるに、第一引用例(実公昭三四―五一九二号公報)によれば、第一引用例においても、「使用中サンドクロス11が押圧されても剛毛の束5が蟻溝4の開口縁迄撓曲され」、「サンドクロスを一様の圧力で被磨面に接触せしめ、磨き過ぎの失敗や磨き足らぬ部分を生じることが少」ないことが明らかであり、これを左右するに足りる証拠はないから、この点においては、本願考案も第一引用例のものも、その作用効果に顕著な差異はないものとするを相当とする。なお、原告は本願考案の束6が平面円形の繊維集団をなし、外方に放射状に突出しているに対し、束5が平面矩形状をし、その結果本願考案のものは、回転方向のみならず軸方向、斜方向のいずれにおいても同圧力で研磨するに対し、第一引用例のものは回転方向においてのみ同圧力で研磨する旨主張するが、前記本願考案の要旨に本願実用新案登録願書及び訂正説明書を総合すると、本願考案において、束6が原告主張の円形状を呈することは本願考案を構成する要件と認めることができないのみならず、サンドクロスの柔軟さにはおのずから限度があることはその性状から、当然のことであるから、本願考案の剛毛の束6が第一引用例の束5に比べて全く自由な方向に撓屈するものとも認めえない。
(2) また、原告主張の(2)の作用効果についても、「被研磨部からサンドクロスを離すと束5が起毛復元すると共に束5の繊維は個々に撓むために研磨部の皺目にもサンドクロスを進入」させ、「従つて不規則面又は卵の表面研磨等に用いて極めて便利」であることが明らかであり、これを左右するに足りる証拠はないから、この点においても、両者の作用効果には顕著な差異は認めがたい。
(3) 原告主張の(3)の作用効果も本願考案が第一引用例のものに比し、剛毛の植設部の構造が精度を要するものでないことは、明らかなところではあるが、研磨中におけるサンドクロスと剛毛の束の先端との関係が狂わず、また、製作組立が容易であるといつても、それがどの程度において、そうなのか必ずしも明らかでないから、仮に両者間に差異が存在したとしても、いわゆる程度の差の域を出ないものとみるほかはない。
これを要するに、原告主張の本願考案の奏する顕著な作用効果なるものは、その構成要件である公知ないし周知の個々の技術について当然予測される効果の単なる集合の域を出ないものとみるほかはなく、したがつて、これをもつて本願考案に特有の顕著な作用効果とみることはできない。したがつて、本件審決が、本願考案をもつて、各引用例に示された公知事実から当業者の容易に推考しうるものであるとしたことは、結局、正当であるといわざるをえない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 武居二郎 友納治夫)